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■■■ ロジスティクス・キーワード~ なるほど物流効率化
■■■ No.83 日本の物流ノウハウは海外へ輸出できるか(2)
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前回のメルマガを書いたその晩に、朝まで生テレビ2010という番組を思いがけず
見ました。「ド~する?!日本の未来」というテーマでした。そこで、異文化感受性、
というお話をしていました。曰く、個人の成長には異文化に触れることが、もっとも
効果的で、今の日本と日本人には「別にわざわざ不自由な海外にいかなくても」と
いう意識が強く、海外にいく必要性も感じていない人も多い、という話がありました。
これはきっと産業でも同じだなあ、と実感。 かくいう私たちも、国外の企業に向けて、
あるいは国外に行く企業の物流についてなんらかの知見があったかというと去年
まではありませんでした。ところが昨年末から、どんどんお客様が海外を目指し
はじめ、一気にグローバル化してきています。
グローバル化もいずれ来る話ならば、来る前に行く!という気持ちで行動を起こして
いきたいです。それでは後編です。どうぞ。
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物流のプロが読む。楽天も自社で物流を構築する、という記事がトップニュースを
飾りました。とうとう、物流の話題が日経の1面を飾る時代。物流の重要性は日に
日に増しています。5月号のテーマはペリカン消滅後の物流について。宅配の将来
がこれでわかります。成功談でも、ケーススタディでもない、今の日本の物流の
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☆前回のおさらい
海外へ日本の物流ノウハウを普及させるためには、 ・業務のハード、デバイス、
ツール、オペレーションノウハウの標準化が必要・海外事業へ進出できる余裕を
作るための国内事業の経営的安定が必要 と書きました。これらを実現するため
にはどうするか。というお話をさせていただきました。
このへんについて、今考えていることをお伝えします。
☆日本の物流にはOSが足りない
いま、ビジネスをするにあたって、パソコンの存在はかかせないものになっています。
私の仕事は1日の大半をパソコンの操作に費やしていますが、これがなくては全く
仕事にならないぐらい、依存しています。ハードであるパソコン本体はすでに10万円
も出せば相当いいものが買えるぐらいコストパフォーマンスがよくなっており、デバ
イスにしても、ツールとなるアプリケーションも同様に、入手しやすくなっています。
操作の方法は、勉強しなくてはいけないこともありますが、ほとんど説明書を見ない
でも1日でなんとか使えるようになります。
これらは今ではGoogle他の企業が多数提供していますが、多くはマイクロソフトの
開発した「Windows」というOS(オペレーションシステム)上で動きます。これは世界中
の人間が基本的な機能を使うにあたり、ほとんど同じ操作でそれができるよう、洗練
されたアイコンや方法・機能が搭載されています。 世界中に普及するものは、ほぼ
すべてにおいて「世界中の誰が使っても、期待された結果や性能が出せる何か」が
備わっています。 では、物流にはこれがあるでしょうか? あるにはあるのですが、
意外と少ないのが現状です。物流にはOSがない、そのために世界中でノウハウを
共有することが困難になっているのです。
☆ハード面は既に世界をリード
では、物流ノウハウを海外へ輸出するにあたり、世界の人がすぐに使え、日本で行っている
作業と同程度の機能、性能が出せる物流のOSとは何になるのでしょうか。また、どうすれば
それらは普及されるのでしょうか。 物流はモノの移動が本質になるので、まず出発地と
目的地をつなぐ道路がある、道路がなければ、海路、空路があることが第一になります。
これらがない、ということになると話が進まないので、出発地と到着地をつなぐなんらかの
道はある、ということで話をすすめます。パソコンの電気みたいなものです。
次に必要なものは荷物を運ぶための船、飛行機、鉄道、トラックといった、ハード関連に
なります。これらは飛行機を除いて、日本の技術や製品が世界トップレベルのものが多い
です。すでに輸出している物流ノウハウといっていいでしょう。他国とのハードとの大きな
違いは、もともとの出来が良い事からメンテナンスコストが低いこと、燃費や設計などの
基本機能の性能が高いこと、IT装備などの付加価値装備のオプションが豊富なことなど
でしょうか。もともとトラックなどはシャーシで購入して、荷室や装備はオプションで付ける
(架装)ことが多いですが、最近はメーカーで架装済みで売るケースも多くなっています。
ハード面では十分に世界標準を取っていて、かつOS化されている、といっていいでしょう。
☆デバイスは百花繚乱だが、そのままで輸出は困難
このメルマガでいう「デバイス」とは、物流を行う上で便利、あるいは効率的な機器や容器を
イメージしています。具体的には
1)無線、携帯電話などの通信機器
2)カーナビなどの運転支援機器
3)デジタコ、アルコールチェッカー、ドライブレコーダーなどの車載管理機器
4)ハンディスキャナやRFIDなどの個体識別機器
5)パレットやオリコン、ダンボール箱などの標準容器類
6)庫内作業効率化のためのマテハン設備
ぐらいでしょうか。1)については今はほぼ携帯電話が通信手段になっていますが、機器自体は
世界標準ではないですね。ただしすでにビジネスには必要不可欠なものですので、機能特化
できれば、まだ物流の世界でOS化できる可能性はあります。ヤマト運輸や佐川急便のドライ
バーが使っているハンディターミナルは、スキャニングの他にメール受送信などの双方向通信
機能を持っていて、これは世界標準を狙えるノウハウと思います。
2)のカーナビなどは道案内が必要な都市がどれだけあるか、という問題があり、デバイスとして
の完成度は世界トップクラスと思うのですが、活用シーンと地図の精度が最大の障壁になると
思います。
3)の車載管理機器も同様に、デバイスとしての完成度は高いですが、国の交通政策、規制の
有無が導入の動機になり、導入せずに何かあったときのデメリットが、導入費用を上回る時に
普及が進む類のものなので、費用対効果の話がポイントになります。
4)については、管理する価値のあるものから普及が進む類のものです。それらが非常に大量、
あるいは高速に流通する時に付加価値が出ますので、これらも先進国で、サービスレベルが
問われる小売業を中心にノウハウ輸出が可能かと思います。端的にいえば、セルフレジが普及
するぐらいの状況で普及が進むと考えています。
5)については日本は相当なポテンシャルを持っていますが、これも各国の制度や規制に左右
される要素が大きい部分です。長さ、重さの単位が世界統一できていないように、世界共通までは
いくつかのハードルが控えています。また、リターナブルやレンタルパレットなどは回収率の問題
があり、これも先進国しか普及できない可能性があります。
6)のマテハンは、ダイフクが世界で3指に入るメーカーで、ポテンシャルはかなり高いと言える
でしょう。ただし、マテハンの設計には容器のサイズなどの問題があり、これも標準化は容易で
ない部分といえます。業種や作業の一部に特化する形で世界へ輸出できるものが出てくるでしょう。
総じていえば、デバイスはハードに付随するものなので、ハードの完成度が高いほどデバイスの
やれることや魅力も増すと考えられるのですが、初期投資に見合うリターンをまだ十分に回収
できる価格にはなっていないこと、デバイスが各国の制度や事情に特化しているものが多いため、
国外の実態にマッチしていないことが普及を妨げる要因になっていると考えられます。
☆ツールはインターネットを基盤にまだ十分OS化の余地が
ツールとは、物流作業を実施するために活用される伝票類や管理ソフトなどをイメージして
います。具体的には次のようなものです。
7)GPSやTMSなどの車両動態管理機器
8)WMSなどの庫内業務管理機器
9)日別採算管理やレイバーコントロールのための帳票、ソフト
10)伝票や帳票といった書類フォーマット
7)については、フォワーダー各社が船や航空輸送で「トラッキング」と称して顧客に貨物の
動態を見せる、という形で普及が進んでいます。これは日本でも普及していて、貨物追跡は
すでに標準装備です。車両の動態管理、という点でも、インターネット・地図ソフトの普及
とともに年々よいものが出て来ている状況です。
ただし、これらは世界と比較して突出していいものが日本にあるか、といえば、そうではない
ものです。
8)についてはかなり世界的には普及が進んでおり、先進国では日本はむしろ普及率が低く、
かつスクラッチ(自社仕様)が多いと記憶しています。ここは数年後には海外のベンダーが
占拠してしまうかと思います。クラウドタイプはネット通販を中心にまだ生き残りの可能性が
あると見ています。
9)は非常に重要なノウハウですが、各国の政策・制度にかなり影響を受ける項目です。
日本のようにパート・アルバイトで現場運営が成立している国もあれば、同一労働、同一賃金
で運用している企業もあります。これらはオペレーションノウハウにも影響します。
10)はペーパーレス化が進む中では、ペーパーレスでの情報通信フォーマットとして
データ形式などが完成されれば輸出の可能性がありえます。ただし、これらも特定の企業
同士の世界的な合併などによって普及していくものになるでしょう。 総じていえば、業務管理
用のツールはすでに海外のベンダーやメーカーが侵食しており押され気味であると言えます。
帳票、ソフト、フォーマットなどは、個別企業のノウハウに当たる部分が多く、輸出するという
レベルまで議論が進展していない状況です。世界的に普及するとすれば、日本企業がどこ
かをM&Aして、主導権を持って海外へ進出するときが普及期となるでしょう。
☆オペレーションノウハウの輸出はパッケージ化が必要
オペレーションノウハウとは、現場(で働く人材)を効率的に配置・指示し、生産性を高め
ながら作業を進めて行くノウハウをイメージしています。具体的には
11)5Sなどの基本動作の徹底
12)作業の標準化・マニュアル化
13)インセンティブなどの報奨制度
14)QCサークルなどの継続的、自主的集団活動
15)物流ABC、人時生産性管理などの現場作業の「見える化」
16)アメーバ経営、日別採算管理などの管理会計による最終利益を想定した
現場運用
17)IE(インダストリアルエンジニアリング)、VA(バリューアナリシス)などの
現場業務のデータ化と、データを基にした科学的アプローチ
18)SCM(サプライチェーンマネジメント)のような全体最適を想定した物流業務設計
などをイメージしています。すでに世界へ進出したメーカー各社は、これらすべての
ノウハウを多面的に使ってノウハウを世界へ輸出し、定着させたといえるでしょう。
イメージ的には、日本は現場のスタッフの意識ややる気を高めて効率を上げるボトム
アップ、権限移譲的なアプローチが、諸外国(特にアメリカ)はまず理想型としての
全体像があり、これらを実現させるためのデザインがある、といったトップダウン、機能
特化型のアプローチが得意、というイメージがあります。 その意味では、ここで
挙げた中では、16)と17)が分岐点になります。
現時点ではどちらも成功している企業があるので、優劣はつけがたいことがあるの
ですが、同一労働、同一賃金制度をもつ国により普及しやすいのはトップダウン・機能
特化型でしょう。逆にそのような制度がない国の場合は、日本型のほうが事業としての
広がりがあると考えられます。 総じて見れば、オペレーションノウハウの輸出は可能
である、と言えますが、その普及にはストーリーが必要であり、最終的に働く人にどの
ようなキャリアプランを提示できるか、という経営思想の問題になり、これを徹底できる
企業が必要と考えられます。
オペレーションノウハウだけを切り取って輸出するとした場合、物流は基本的にはサー
ビス業で、個別機能の集合体であるため(ドライバー・物流センターで働く人は全く違う
機能であり、これらの業務を渡り歩くことはあまりない)トップダウン・機能特化型のほう
がノウハウとして輸出しやすいように感じています。 いずれにしても言えることは、
個別のオペレーションノウハウだけでは定着・継続はおぼつかない、ということでしょう。
働く人がメリットを感じて、将来どうなるのか?という疑問に答えるだけのキャリアプラン
を示し「だからこのノウハウが必要なんだ」と言い続けるパッケージと伝道者が必要と
考えます。
☆ノウハウの輸出にはきっとこんな業界変化が必要
非常に長くなってしまいましたが、もう少しお付き合いください。ノウハウが長期にわたって
有効に機能するためには、未来を先取りした部分も必要です。勝手ながら、今後物流
は次のように変化していくと妄想しています。
1.輸送ハード: おそらく現状どおり過半は車。ただし運転は自動化され、IT化される。
自動化できない部分は特別資格が渡され、幹線輸送ドライバーはパイロットと
呼ばれるようになる。国内中近距離輸送は小型車(4t車)と軽・自転車・台車(!)に
分かれ、それぞれのニーズにあった雇用条件が整備される。船と飛行機は更に成長
するが、ハブ空港、港湾政策に失敗して、法人税優遇もなければ、おそらくすべての
キャリアが海外へ本社を移動するかもしれない。
2.インフラ: 道州制が導入され、人口は更に一極集中するようになる。よって、現状以上
のインフラは地方過疎化によって整備の必要性がなくなり、地方同士を結ぶ幹線道路、
鉄道、空路、海路はセットで整備される(現在の電力会社のような経営状態。)国内
物流の幹線輸送の一部は飛行機と同様、パッセンジャーカーゴ形態になる。東北・上越
新幹線のMAX型車両の1階部分がカーゴに変化。もしくは貨物車両としてけん引。
高速道路はJRが引受け、バス輸送も含めた総合化に至る。
3.物流事業者: オーダーメイド物流(3PL)が更に変化し、船・飛行機のようにキャリア
(インフラ所有者)とフォワーダー(営業会社)に分離される。トラック輸送はローカル
ネットなどの協同組合がより集約され、大手インフラ会社としてまとまり、業務を受託
するようになる。 倉庫も同様にREIT化は進行。相続税の高騰によりオーナー家主は
旧財閥ぐらいしか残れなくなる。よって倉庫も保有せず、都度調達する流れ。フォワーダー
の役割は営業獲得と事務処理・庫内業務人員の手配。3PLは過渡期を経て、最終的
にはすべてノンアセットとなり、フォワーダーとなる。
4.物流の価値: 効率追究の結果、役割は完全に分離され、業務ごとにキャリアパスが
成立。雇用形態は同一労働、同一賃金に変化。付加価値はシステムとしてのワン
ストップソリューションの完成度による。よって、物流はキャリアとフォワーダーに分かれ、
フォワーダーはツールとオペレーションノウハウの開発と運用に特化し、キャリアは
ハードとデバイスの運用に特化する。
5.物流コスト: 契約形態、課金体系はさほど変わらない可能性大。各パートで効率化が
進み、トラックも効率化余地が減るほど、燃料・原料価格などの相場で簡単に価格が
動くようになる。ここまで効率化されて、やっとサーチャージが機能。
6.産業規模 予想通りとすれば、産業化はなされるが、従事者人口は減る。ただし業界年齢
は若返る。
☆ノウハウの輸出には、物流の産業化(儲かる化)が必要
物流の産業価値は、現状完全に売上ベースになっており、簡単にいえばどんなに高品質で、
高学歴の人間がドライバーでも、荷物がそこになければ給料は低いまま、トラックの積載量
以上の給料はもらえない、ということになっています。ドライバーは乗っている車両の最大
積載量を見るだけで生涯年収がわかってしまいます。この現状からすると、トラックの荷台を
満載できる会社こそが従業員満足を高められる会社になります。
では、現時点で荷物を集められる会社とはどんな会社なのでしょうか。
それは高度成長期に資産を作れた会社です。資産があり、借金の額が十分返済可能な範囲
で回せていれば「受け皿力」で荷主企業が少なからず確保できます。つまり与信が参入障壁
になっているのです。
もう1点の課題は、このような物流企業の経営者側のチャレンジャースピリットが少なく、「都合
のいい業者」に甘んじていることも少なくないことが挙げられます。 物流資産をコストセンター
と見る荷主企業はまだまだ多いですから、資産を持ってくれて、あまり改善だなんだと言わない
業者のほうが使い易い、という企業も少なからずあります。この現状に心ある人はみなやる気
をなくし、独立開業するのですが、やはり初期の与信を超えられない経営者が多いのです。
簡単に言えば、いい荷主との出会いこそが99%事業の命運を決める、というのが現在の平均的
な物流事業者の姿です。能力や気遣い、意欲、良いスタッフが揃っていても、経営者の営業能力
によって報われたり報われなかったりでは、かなりお寒い状況です。
この2点の課題を解決する方法はおそらく「実務・営業分離」と、「キャリア(ハード、デバイスを
持つ中小運送業)のネットワーク化」になると思っています。 大型トラックの運転は付加価値が
ありますし、もっと効率を上げられます。効率とは積載率であり、それは実務、営業分離が最も
近道です。はっきりと車型で従事者を分ければ、若者も女性も参入でき、キャリアプランが
きちんと出来、流動化もできるでしょう。ネットワーク化できれば、最も参入障壁が高い「配車」
業務が飛躍的に効率化されると思います。ハードを持つ企業が数社寡占になると、バランスシート
が大きくなりすぎ、機動力、対応力、多様性が低下します。また集約の過程での損失が大き
すぎます。よって、ネットワーク化が最適解になると見ています。
片や営業に特化する3PLは、よりハード、デバイスの不安なく、センター業務部分でツール開発
やオペレーションノウハウに特化することで顧客満足を高められるでしょうし、共同配送などの
取り組みに特化する同業者ネットワークに強い3PLも出てくるでしょう世界に伍して戦えるノウハウ
を、中小企業レベルから活用できるメリットが荷主企業にも出てきます。
当然現実世界なので、こんなにきれいには行かないでしょう。ただし、現状のような、業界の平均
経常利益が1%未満の業界のままでは、投資もできず、先行きは真っ暗です。物流ノウハウ輸出
には、業界平均経常利益率が2%を越えることも条件になるでしょう。
☆まとめ
以上、ながながと妄想してしまいましたが、日本の物流を輸出するために必要なことは ・平均経常
利益率2%以上になるような、物流業界の健全化、規制緩和・そのための事業者側の努力としての
営業・実務分離・キャリア(ハード、デバイスを持つ中小運送業)のネットワーク化・先進的な3PL
企業によるオペレーションノウハウ・ツールのパッケージ化・安価で、各国の国策、規制に対応した、
インターネット通信環境で動くデバイス・世界の潮流を先取りする、安全・省エネ・環境にやさしい
ハード になると考えています。まだ妄想段階ですが、たぶんこんなふうになると考えて、ぜひ出来る
限り早い時期にメイド・イン・ジャパンの物流ノウハウを輸出するあたりに絡んでいたいと思います。
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