今後景気が回復しても国内物流市場が元の規模に戻ることはないだろう。とりわけ地方は苦しくなる。
生き残るためには、競争のないニッチ市場を開拓する。あるいは荷主から見えないところで利益を
生み出す仕組みを構築しなければならない。物流業も頭で儲ける時代になっている。
事業性のカギは積載率より車両回転率
国内物流市場の規模は確実に縮小している。日本の名目GDPや荷主企業の売上高に占める支払い
物流費の比率などから、当社では国内運送市場の規模を二〇〇七年度で約二五兆円と弾いている。
これがリーマンショックに襲われた〇八年度は約二四兆円に縮小した。〇九年度もさらに七〇〇〇
億円程度の縮小を見込んでいる。
一方で、3PL事業の規模は本誌の市場調査(直近は〇九年九月号に掲載)の通り、拡大を続けている。
単純なトラック輸送や保管だけの倉庫業などの取り分はそれだけ減っていることになる。とりわけ貸切
輸送に比べて固定費負担の大きな路線会社(特積み)の売上減少はいまや壊滅的なレベルに達して
いると想像される。
これに対応して全国規模の大手路線会社は業界再編に動いている。セイノーホールディングスは昨年
四月、西武ホールディングス傘下の中堅路線会社、西武運輸を買収した。同様に福山通運は昨年一〇月
に王子運送を子会社化している。大手が中堅を吸収するかたちの路線業界の再編は今後はさらに加速
するだろう。
一方、地方の路線会社は共同配送シフトを強めている。業者や荷物を絞って条件に合う荷主にローラー
作戦をかけるかたちで、荷主数社レベルの同業種共配をしかけている。同業種共配は納品先が重なる
ケースが多いため、積載率が向上し、また荷物を特化することで取り扱い品質も向上するという利点が
ある。
しかし、現状では同業種共配が事業として広く成立しているのは食品ぐらいだ。他の商材の共配は期待
されたほど定着していない。同業種の荷主同士で、かつ配送エリアが重なっていても、納品先の受け入れ
時間帯まで重複している場合には、別に車両を仕立てなければならなくなり、積載率が思うように上がらない。
施設や車両の使用時間帯が重なれば設備稼働率も上がらない。
その点で食品は一日のうち朝昼夜に消費シーンが分散されていて、同じ食品系荷主でも多様な業態が
混在しているため設備を有効活用しやすい。ある低温物流会社は同じ物流センターに外食チェーンと食品
スーパーを同居させて、車両の回転率を高めている。レストランとスーパーでは納品時間帯が違うので
同じ車両を使用できる。
五割だった積載率を八割に上げても収入は一・六倍になるだけだが、車両回転数を上げることができれば
収入は倍掛けで増えていく。つまり共配事業は車両積載率よりむしと一日当たり車両を何回転させることが
できるか、つまり車両回転数に大きく左右されることがハッキリしてきた。
車両回転率を向上できるのであれば、必ずしも同業種同士である必要はない。異業種同士の共配では
取り扱い貨物の特化によるサービス品質の向上という利点はなくなるが、上手く荷主を組み合わせることで
配送コストの大幅な削減が期待できる。
有力3PLのあるセンターでは、食品スーパーと機械メーカー、そして日用雑貨品卸を同じセンターに入居
させて異業種共配を実施している。車両を三回転以上させて配送費で利益を得ている。これも”荷主ミックス”
の工夫だ。こうした3PL主導型の配送効率化は、中堅以下の物流会社にとって一つの方向性を示している。
ただし、ターゲットを絞る必要がある。付加価値を生むプロセスが、完成品の製造工程からサプライチェーン
の川上と川下にシフトする構造変化を「スマイルカーブ現象」と呼ぶ。主にハイテク産業の収益構造の変化を
説明するのに用いられている言葉だが、同じことが物流業にも当てはまる。
サプライチェーンの入口に位置する素材産業や出口となる小売業においては、運賃単価や物流サービス
に対するニーズはそれほど下がっていない。しかし、サプライチェーンの中間で発生する在庫保管や横持ち
輸送などは、単価も下落しているし、仕事自体が消滅する傾向にある。
実際、国内の荷動きは〇九年中にそこを打ったと言われているが、倉庫業に関しては今年に入っても、
回復の兆しが全く見られない。できるだけ在庫は持たないという考え方が荷主に定着し、単純な保管に対
するニーズは弱まっている。構造的な変化であるため、今後も保管ニーズが増加に転じることはないだろう。
※製造業のスマイルカーブ現象が物流に波及

物流業にもスマイルカーブ現象
物流会社も今後は営業ターゲットを、川上と川下にシフトさせていくことになる。
ただし川上と川下では、物流企業に求められる役割が大きく異なっている。3PLを評価する判断
基準も全く違う。
サプライチェーンの川上に位置するメーカーは、物流アセットの所有を3PLパートナーに求めて
いる。必要な施設や車両背坪を所有していることがパートナーの条件だ。倉庫は賃貸、輸送も
ほとんど傭車に頼っているというノンアセット型では相手にされない。中間マージンを抜かれるだけ
で付加価値がないと評価されてしまう。
一方、川下の小売業は3PLに対し、商品の取り扱いや取引条件として必要な物流サービス
レベルを十分に理解していることを求める。その業界に特有の物流条件や納品ルールに対応
できるオペレーションが必要だ。新たにパートナーを選択する場合でも、同じ業種・業態の実績が
ない3PLは候補にすら挙げてもらえない。
同じ3PLでも川上型と川下型ではビジネスモデルが全く違う。一つの物流会社が二つのニーズを
同時に満たそうとするのは現実的ではない。3PL事業の拡大を図る物流会社は、二つのうちどちら
のタイプを選ぶのか判断する必要がある。
一般に中堅以上の路線会社やアセット型のメーカー系物流子会社は強みを活かせる川上型を
選ぶ。一方、中小の物流会社や、メーカー系物流子会社でもノンアセット型の場合は、初期投資
のいらない川下型を選ぶほかない。そのため川下型は競争が激しく、料金の叩き合いになりがちだ。
それでもハマキョウレックスやセンコーなどの有力3PLは川下型で安定した利益を生み出している。
カギを握るのは情報だ。川下物流は川上に比べ波動が大きく、制約条件もたくさんある。そのオペ
レーションを有力3PLは情報力を駆使して効率化している。ノウハウを持たない物流会社が川下
の3PLに手を出しても、人件費負担で採算割れして長続きはしないだろう。
小規模荷主をたくさん集めるというアプローチで汎用型センターを成功させている事例もある。
当初は既存荷主の物量減少による空きスペースを埋める目的で、五坪~10坪程度の荷主をセン
ターに入居させた。入居に当たってはその3PLのWMSを使い、作業も標準化されたオペレーション
で処理することを条件にした。これが当たり、小規模荷主専用センターを設置するほど拡大している。
通常なら物流会社に相手にされないレベルの小規模荷主は他に競合相手がいないため、料金を
叩かれることもなく採算性がいい。
物流は相場商売の側面が強い。特徴のないサービスは価格勝負になってしまう。それを避けるには、
同社のように競争のないニッチ市場を開拓するか、あるいは荷主から見えないところで利益を出す
仕組みを構築するしかない。物流業はこれからますます、頭で勝負する市場となっていく。
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